初めて能勢樹液採集〈前編〉
 
初めての能勢樹液採集 〈前編〉
2004年 7月10日
     
管理人のワイルドオオクワ採集記/04能勢前編1 前回の滋賀採集より2ヵ月あまり経った7月10日、私は初めて能勢地方へのオオクワ採集に出かけた。能勢地方といえば、山梨県韮崎周辺、佐賀県筑後川流域と並ぶ日本のオオクワガタ三大産地のひとつである。大阪府北部から兵庫県東部に跨がる広大ないわゆる里山地帯で、標高1,000mにもなる高い山は無く、概ね5〜600mという低い山が奥深く連なり独特の地形をつくり出している。そのためクヌギなどの雑木林が非常に多く、古くよりそれらが人の生活とも密接に関係してきた。
 
その結果、数多くの台場クヌギをつくりだすこととなり、昆虫たち、とりわけオオクワガタにとっては最適な棲息環境となり、種の増加を促してきたのだと思われる。その広大なエリアの中に川西、猪名川、三草山などといった有名採集ポイントがあり、特に阿古谷産など数多くの良好姿型個体が知られオオクワガタ愛好家の羨望の的となっている。
私も近年少なからずそれらへの憧れを抱いており、それらを育む環境をこの目で見てみたいという思いがあった。また、本誌ではすでにお馴染みとなったカリスマ樹液採集人N氏からも「能勢は本当に素晴らしいところ、感動しますよ!」と幾度となく聞かされていた。そんな折、本誌にも掲載されたのだが、彼が昨年上阿古谷で樹液採集し46mmという大型のメスから採卵したF1が驚くべき太さで羽化したのだった。ワイルドF1という極めて浅い段階でこれ程の個体が出るとは・・・確かに産地による特徴、傾向というのはある程度あり、阿古谷産は太い!と言われ続けて久しい。だが、これまで全国各地で多くのワイルド個体を採集し、また、それらのブリード個体を数多く見てきたN氏は、「それでも確認している固体が少なすぎるため、結論付けてしまうことは無理があるが、日本全土東西南北、産地による差違以上に個体差や環境による影響の方が大きい。」と言っていた。確かに北方と南方では生息環境が大きく違う、気温も去ることながら幼虫の生育樹木の種類も全く違ってくる、それらの要員によって羽化した成虫固体の形状に大きな変化が表れるのは必然の事と言える、だがそれは生育環境の違いがもたらすものであり、固体差は有るものの、各産地の固体が持っている資質としては大差の有るものでは無いと考えていたのだ。高々数十頭レベルのワイルド個体やそれらのブリード個体を確認した程度で、その産地の個体の特徴がこうだと決めつけてしまう事は甚だ疑問を感じる。だが、そんな考え方に一石を投じると言っても過言では無い程、その阿古谷産F1は強烈だったのだ。これほどのオオクワを育む能勢とは・・・かくして私はその環境を自分の目で確認せずにはいられなくなってしまった。
 
朝7時に集合、メンバーはN氏と本誌プレスWさんと私である。梅雨の真只中、それにふさわしいひどい雨降りで車の出入りもままならない程だ。遠くでは雷鳴も聞かれる、大丈夫だろうか?やや不安な私の面持ちを察してか「いくらこっちが雨降りでも現地に着くと不思議と晴れてきていつも良い感じになるんですよ。だからきっと大丈夫ですよ。」とN氏、「そうなれば絶好の採集日和やね。」期待と不安の気持ちの中、3人を乗せた車は集合場所をあとにした。高速道路を一路西へ、比較的車も少なく快適に走れる。徐々に雨も落ち着き、関ヶ原を越えた辺りからは陽は注さないまでもかなり空は明るくなってきた。道中あれこれと昆虫談議に花を咲かせるのも採集の楽しみのひとつである、途中高速を降りた付近でやや道を間違えたりしたものの、わりと順調に街中をぬけ、田舎道になってくるといよいよオオクワガタの聖地も間近いという雰囲気になってきた。やがて「能勢」と書かれた道路標識が目に入る、もうワクワクしてたまらない気持ちだ。はやる気持ちについアクセルも開け気味に山道を急ぐ。途中「阿古谷オオクワ園」と書かれた看板が目に入ったり、「フジコン」の近くを通り過ぎると改めてここは、歴史あるいわゆる現代オオクワガタの言わば発祥の地なのだと思った。
今回の採集は私たち3人の他に、現地にて神戸の仲間3人、仲氏、谷口氏、山本氏と落ち合っての採集である。地元の彼らは長年の採集経験でこの地方全般に非常に精通しており、数年来、N氏の能勢オオクワ採集には必ず同行している。その彼らとはふもとのコンビニにて待ち合わせてある。そこには私たちの方が一足早く到着した。待ち時間の間、私は辺りを散策していると「下阿古谷」と書かれた道路案内が目に入った。今まさにそこにいる事を実感させられる。と同時にいよいよという気持ちも沸々と湧いてくる。
程なくして神戸の仲間たちも到着し、あいさつもそこそこにとりあえずお昼という事で近くの喫茶店で昼食に、N氏たちは近況報告方々今日の作戦会議、とりあえず最近見つけた良さそうな場所へ行ってみようと早々に食事を済まし車に乗り込んだ。雨はすっかり上がり日ざしも出てきている、さすが、N氏の予感通り不思なものである。程なくして到着したのは山裾の田の脇に佇む1本の台場クヌギだった。幹の直径は70cm程もあるだろうか、2m位のところで両腕を広げたように二手に幹が分かれ、それは立派な見ごたえのある木だ。分かれた幹の片方に樹液が出ておりカナブンが着いている、脇には気になるウロも空いており、早速N氏が登ってみた。それにしても彼の身軽さにはいつも脱帽させられる、棒高飛びと100m走で国体にまで出場したという人並み外れた運動神経と、しなやかな身体のバネがあればこその芸当である。ウロが幹の下側に空いているため、半ば片手でぶら下がるようにして覗きながらチェックしていた。これも身軽くなければ難しい技だ。しかし、雰囲気は良い感じなのだが気配は今一つといったようで、N氏は粘る事なく降りてきた。近くにもまだ良い木があるという事で、いったん車に乗り込み、そこから数百mも行っただろうか、細い脇道を斜めに入って行くと民家の脇に大きなクヌギが聳えているのが目に入った。その木は台場木では無いので真直ぐに高く伸びている、かなり高い位置に数カ所樹液が出ているのが見られ、周りをカナブンやスズメバチがブンブンと飛び回っているのが確認できる。そっと近付きながら全員で周りを取り囲んでウロなどを丹念にチェックした。
台場クヌギなど樹液を出す樹木は、どうしても昆虫たちの住処となる、クワガタやカナブンなどはさほど問題にならないだろうが、スズメバチなど時には人に危害を加えかねない、そのために近年、特に人里に近いものは伐採されてしまう事も多く、台場クヌギ減少の一因ともなっている。この立派な木もそうならないで残っていて欲しいものだ、しかしそこからはそれらしい手応えを得られることは出来なかった。気が付くと空はすっかり晴れ渡っていた、私は小雨に備えてウインドブレーカーを着ていたのだが、とても着ていられない程気温は上昇していた。今日は暑くなりそうだ、Wさんはなんと、もうバテたとぼやいている、いくらなんでもちょっと早過ぎ・・・彼の体力の無さにはちょっと呆れるが、それでも身体にムチ打ってでも、採集に同行する情熱の熱さは立派なものである。梅雨の晴れ間、オオクワ採集には絶好のコンディションである、大いに期待に胸を膨らませながら次の場所へと移動した。
     
車で移動中、良く似た風景が次から次へと出てくる、田畑の中、時折民家がありそれらの向こうには雑木林を携えた山が広がる、前述もしたが、本当に絵に描いたような里山風景の連続である、通常里山は奥深い山の入り口や標高の高い山の裾野などに見られることが多いのだが、ここ能勢は全体が大規模な低山地地帯であるため、これほど広大な里山が形成されたのだろう、それに加えて地理的な条件と近郊にある大都市の人の生活を支える木材需要などのために、多くの台場クヌギが作られることとなり、その結果オオクワガタの一大生息地となったと伺い知れる。人間の生活の営みが時として野生生物の種の増加につながることもあるようだ、しかし、近年の都市開発などにそれを期待することは出来まい、ここ能勢でも今後おそらく都市化が進み、オオクワガタは減少していくと思う、また、この先、新たに台場クヌギが作られることも無いだろう、だとすれば現在残っている台場クヌギやそれらの立ち枯れはとても貴重なものである、なるべく傷つけないよう大切に残していきたいものだと私は思う。 管理人のワイルドオオクワ採集記/04能勢前編2
 
私細い山道をしばらく進み、到着したところは、私には聞き慣れない地名の場所だったが採集実績はあるところらしい。なおも車で山道を進むと樹液の出たクヌギがぽつりぽつりと表れてきた、その都度全員で車を降り辺りをチェックしていくが、やや陽当たりが弱い感じもあり、オオクワという雰囲気はちょっと薄いようだ。しばらく進むがなかなか良い木は発見できず、なおもどんどん先へ進むと行き止まりになってしまった。やむを得ず来た道を戻って行くと途中で二手に分かれていたところがあり、そこから逆の方に進んで行く事に、すぐのところに1本良い感じの台場があったがそこもあまり手ごたえは感じられなかった。ちょうど駐車できそうなスペースがあったのでその場所に車を止め、そこから歩いて奥へと進む、台場があるところまでは若干距離があるらしい。20分程も歩いただろうか山際にクヌギが現れだした。樹液が出たり、ウロが空いていたりする良さそうなものを見つけては、各々チェックしていると徐々に離ればなれになっていった。私も気が付くと一人になっていたので先へと急いだ。しばらく行くと、林の中を真剣な表情で見つめているN氏が現われた、「どう?」と言いながら近付いていくと「ちょっと見て。」とN氏が指差す。すると山の斜面の林の中、10m程向こうだろうか、1本の台場クヌギが目に止まった。「あそこで何かが追われとるなぁ・・・」良く見ると2m程の高さのところに洞があり、そこにカナブンが入ろうとしては後ずさりという行動をくり返しているのが見える、明らかに洞の中にカナブンよりも強い何者かがいて追い払われているのだ。時折ちらっとそいつのからだの先が見えかくれしているのだが、さすがにこの距離からではクワガタなのかどうかも確認できない。「オオクワだろうか?」「う〜ん、どうだろうか、でも怪しいね。」そう言うとN氏は遠巻きしながら静かに徐々に近付いていった。それにしても彼の観察力には恐れ入る、この距離では私など彼に教えられなければ絶対に気付かなかっただろう、N氏も視力は良いようだが、私も視力は2.0である、それでも彼に指差されあそこだと言われなければまず判らない程微妙な手がかりである。相当慎重に近付いていったのだが、5m程の距離まで近付いた時、カナブンは追われなくなってしまった。やつはウロの奥へと姿を消してしまったのだ。この素早さはますます怪しい感じだ。私も木の根元まで行くと「かなりオオクワっぽいね。」とN氏も言う。やはり… しばらく静かにその木を見上げて観察していたが、登ってみることにした。ところが洞の付近で枝別れしているが、そこまで手や足を掛けられる場所がない、私が後押ししながらなんとか登ったが、これだけ木を騒がしてしまったので簡単には出てこないだろう、上にあがって隈無くウロをチェックしたが、案の定、やつの姿は見られなかった。彼は木の上で静かに居座り持久戦の体制に入った。ここからは根比べだ、N氏は、だが、時には2時間、3時間もかけて捕獲することも珍しく無いと言う。そこまでしてでも、しかしあくまで樹木は傷つけずに捕獲する、彼のこだわりのスタイルはオオクワガタへの思いが並々ならぬものであることの表れである。果たして姿を現すだろうか? 私は邪魔をしないよう静かに辺りの木々をチェックしてみた。こうしてみると周りの開け具合、陽の当たる状況など、居るとしたらやはりN氏が今登っている木が一番怪しい、私はもう少し上の方へ登ってみた。するとやや開けた場所に良い感じの台場が数本あるのが目に入った、そっと近付いて調べてみるが、辺りの状況は悪く無いのだがこれと言った良いウロや樹液痕が見当たらない。そうそう良い木は無いものである。やや奥の若干急な斜面に良さそうな木が見える、樹液も出ていてカナブンも数匹群れているのが確認できる。しかし足場が悪く簡単には辿り着けそうも無い、少し下に降りて登り直した方が良さそうだ、薮をかき分けやや下ってから静かに登りながら近付いていくと、困ったことにオオスズメがうろついているのが見えるではないか、「ちょっと無理か…」躊躇していたその時、「おった!」N氏の声が聞こえてきた。「!」、そう言えば彼は登っていたのだった、私はつい自分の事に夢中になって彼が持久戦をしている事を忘れていた。いつの間にか他の仲間達もN氏の近くに集まって来ていて、辺りはにわかに騒々しくなった。どうやらオスらしい、急いで斜面を下ってみんなの元へ行くと、やつはN氏の手の中に納まっていた。「おお!」やはりオオクワだったか、しかし意外と早く出て来たものだ、N氏が言うには新成虫はまだ経験が浅く、ついうろうろ出て来るやつも多いらしい、こいつも体がきれいなのでまず新成虫だろうとの事だ。そういうこともあるのか、また一つ勉強になった。サイズを計ってみると58mm、中歯型のワイルドらしい固体である。「これが能勢のオオクワか…」感慨深い思いと共に「自分で捕りたい!」という強い気持ちが込み上げて来た。写真撮影などでひとしきり盛り上がった後、さらに周辺を散策、するとN氏が先程私が躊躇した木をチェックしている、どうやらスズメバチは居なくなったようだ、しばらく様子を伺っていると彼は何やらウロの隙間をほじっている感じに見える、「おった、おった。」と彼は足早に少し斜面を下ったところでしゃがみ込み、何かを手で拾い上げた。「何?オオクワ?」「ああ、メス、ちっちゃい。」見ると30mmもあるだろうか?しかしつややかな前胸と縦縞の入った上匙、まぎれも無いオオクワのメスであった。話によるとウロの隙間にオガコが詰まっていて、そこを掘ったところ中に居たそうだ。それにしても先程自分で探しかけていた木だけにちょっと残念だ、しかしそこまで徹底して探し出し見つけられたかと言うとちょっと自信は無かった。早々につがいをキャッチすることができ、一同安堵すると共に、「今度は自分も見つけてやろう!」とみんなの志気と集中力も高まった。さらに奥の方へ、各々これはという木を見つけてはチェックしながら進んで行った。
   
管理人のワイルドオオクワ採集記/04能勢前編3 細い山道をしばらく進み、到着したところは、私には聞き慣れない地名の場所だったが採集実績はあるところらしい。なおも車で山道を進むと樹液の出たクヌギがぽつりぽつりと表れてきた、その都度全員で車を降り辺りをチェックしていくが、やや陽当たりが弱い感じもあり、オオクワという雰囲気はちょっと薄いようだ。しばらく進むがなかなか良い木は発見できず、なおもどんどん先へ進むと行き止まりになってしまった。
 
やむを得ず来た道を戻って行くと途中で二手に分かれていたところがあり、そこから逆の方に進んで行く事に、すぐのところに1本良い感じの台場があったがそこもあまり手ごたえは感じられなかった。ちょうど駐車できそうなスペースがあったのでその場所に車を止め、そこから歩いて奥へと進む、台場があるところまでは若干距離があるらしい。20分程も歩いただろうか山際にクヌギが現れだした。樹液が出たり、ウロが空いていたりする良さそうなものを見つけては、各々チェックしていると徐々に離ればなれになっていった。私も気が付くと一人になっていたので先へと急いだ。しばらく行くと、林の中を真剣な表情で見つめているN氏が現われた、「どう?」と言いながら近付いていくと「ちょっと見て。」とN氏が指差す。すると山の斜面の林の中、10m程向こうだろうか、1本の台場クヌギが目に止まった。「あそこで何かが追われとるなぁ・・・」良く見ると2m程の高さのところに洞があり、そこにカナブンが入ろうとしては後ずさりという行動をくり返しているのが見える、明らかに洞の中にカナブンよりも強い何者かがいて追い払われているのだ。時折ちらっとそいつのからだの先が見えかくれしているのだが、さすがにこの距離からではクワガタなのかどうかも確認できない。「オオクワだろうか?」「う〜ん、どうだろうか、でも怪しいね。」そう言うとN氏は遠巻きしながら静かに徐々に近付いていった。それにしても彼の観察力には恐れ入る、この距離では私など彼に教えられなければ絶対に気付かなかっただろう、N氏も視力は良いようだが、私も視力は2.0である、それでも彼に指差されあそこだと言われなければまず判らない程微妙な手がかりである。相当慎重に近付いていったのだが、5m程の距離まで近付いた時、カナブンは追われなくなってしまった。やつはウロの奥へと姿を消してしまったのだ。この素早さはますます怪しい感じだ。私も木の根元まで行くと「かなりオオクワっぽいね。」とN氏も言う。やはり… しばらく静かにその木を見上げて観察していたが、登ってみることにした。ところが洞の付近で枝別れしているが、そこまで手や足を掛けられる場所がない、私が後押ししながらなんとか登ったが、これだけ木を騒がしてしまったので簡単には出てこないだろう、上にあがって隈無くウロをチェックしたが、案の定、やつの姿は見られなかった。彼は木の上で静かに居座り持久戦の体制に入った。ここからは根比べだ、N氏は、だが、時には2時間、3時間もかけて捕獲することも珍しく無いと言う。そこまでしてでも、しかしあくまで樹木は傷つけずに捕獲する、彼のこだわりのスタイルはオオクワガタへの思いが並々ならぬものであることの表れである。果たして姿を現すだろうか? 私は邪魔をしないよう静かに辺りの木々をチェックしてみた。こうしてみると周りの開け具合、陽の当たる状況など、居るとしたらやはりN氏が今登っている木が一番怪しい、私はもう少し上の方へ登ってみた。するとやや開けた場所に良い感じの台場が数本あるのが目に入った、そっと近付いて調べてみるが、辺りの状況は悪く無いのだがこれと言った良いウロや樹液痕が見当たらない。そうそう良い木は無いものである。やや奥の若干急な斜面に良さそうな木が見える、樹液も出ていてカナブンも数匹群れているのが確認できる。しかし足場が悪く簡単には辿り着けそうも無い、少し下に降りて登り直した方が良さそうだ、薮をかき分けやや下ってから静かに登りながら近付いていくと、困ったことにオオスズメがうろついているのが見えるではないか、「ちょっと無理か…」躊躇していたその時、「おった!」N氏の声が聞こえてきた。「!」、そう言えば彼は登っていたのだった、私はつい自分の事に夢中になって彼が持久戦をしている事を忘れていた。いつの間にか他の仲間達もN氏の近くに集まって来ていて、辺りはにわかに騒々しくなった。どうやらオスらしい、急いで斜面を下ってみんなの元へ行くと、やつはN氏の手の中に納まっていた。「おお!」やはりオオクワだったか、しかし意外と早く出て来たものだ、N氏が言うには新成虫はまだ経験が浅く、ついうろうろ出て来るやつも多いらしい、こいつも体がきれいなのでまず新成虫だろうとの事だ。そういうこともあるのか、また一つ勉強になった。サイズを計ってみると58mm、中歯型のワイルドらしい固体である。「これが能勢のオオクワか…」感慨深い思いと共に「自分で捕りたい!」という強い気持ちが込み上げて来た。写真撮影などでひとしきり盛り上がった後、さらに周辺を散策、するとN氏が先程私が躊躇した木をチェックしている、どうやらスズメバチは居なくなったようだ、しばらく様子を伺っていると彼は何やらウロの隙間をほじっている感じに見える、「おった、おった。」と彼は足早に少し斜面を下ったところでしゃがみ込み、何かを手で拾い上げた。「何?オオクワ?」「ああ、メス、ちっちゃい。」見ると30mmもあるだろうか?しかしつややかな前胸と縦縞の入った上匙、まぎれも無いオオクワのメスであった。話によるとウロの隙間にオガコが詰まっていて、そこを掘ったところ中に居たそうだ。それにしても先程自分で探しかけていた木だけにちょっと残念だ、しかしそこまで徹底して探し出し見つけられたかと言うとちょっと自信は無かった。早々につがいをキャッチすることができ、一同安堵すると共に、「今度は自分も見つけてやろう!」とみんなの志気と集中力も高まった。さらに奥の方へ、各々これはという木を見つけてはチェックしながら進んで行った。
 
臨機応変。オオクワ採集には基本的なセオリーはあるものの、固定概念には決して捕われてはいけないと思う。居るべき環境ではない場所にはまず居ないので、それを見極める目は必要でそうで無ければ時間がいくらあっても足りない、しかしそこが居そうな場所ならば、どんなところにいるか、時には想像を絶する箇所に隠れていたりすることもあり得るため、細かなチェックとまさかと思う箇所も丹念に調べてみることが良い結果に繋がる、大胆にして繊細、N氏のオオクワ採集はまさにそんな言葉がピッタリだ。
奥へ奥へと進んでいくと、先に奥へ行っていた仲さん達が現われた。「どうですか?」「う〜ん、ダメですわ〜」戦果未だならずと言ったところか。その辺りにも太くて良い感じの台場が何本か在るのが見える。その中の一番雰囲気のある1本にN氏が登りだした。すると仲さんが「その木、さっき僕が登りましたわ〜」と言っていた、N氏は木の上で座り込んでじっくりとチェックを始めた。「それで見つけられたら、立場ないですわ〜」と仲さんは苦笑いしていたが、その心配は現実とはならなかった。この場所ではこれ以上奥は期待出来そうにないので、引き返す事に、2頭採集出来た充実感に一同足取りも軽かった。
管理人のワイルドオオクワ採集記/04能勢前編4
 
 つづく