オオクワガタ・ワイルドオオクワガタの採集・飼育・用品・販売 台場クヌギとオオクワへのこだわりサイト |
|
滋賀県琵琶湖近隣 続編 皐月の樹液採集 | ||
滋賀県琵琶湖近隣 続編 皐月の樹液採集
2004年 5月23日 |
||
今一つの天候で、欲求不満気味のゴールデンウィーク明けの週末、昼近くになってN氏よりオオクワ採集の誘いを受けた。彼はじつはその日久し振りの休日で、能勢へ採集の予定を立てていたらしいのだが、諸事情により前日に中止になったらしい。連休中ずっと仕事だったのでそれならば家族とゆっくり過ごそうと思った彼だった。しかし、日が明けると穏やかな採集日和だ、とてもじっとはして居られない、とは言え、よもやそれから一人で能勢まで走る事は難しい。先般の滋賀の場所なら近いし家族も連れて行ける・・・という事で私が誘いを受けたのだった。午後からならなんとか都合をつけられそうだったので二つ返事で行く事に決まった。斯く言う私も前回のあの感動が忘れられないでいた、そして今度は自分で見つけたい!という衝動にもかられていたのだ。さらにゴールデンウィーク中に海釣りに行ったのだが天気も悪く、釣果も今一つでパッと気晴らししたいと言う気持ちも手伝った。 | ||
N氏と彼の奥さんと娘さん、私の4人で現地へ向かう。この日はやや薄曇り気味でカンカン照りという訳でもなく、暖かでとても穏やか、明日からは雨という事で気圧は低い、こんな時は生き物の活性はかなり高くなっている。前回の採集から20日程経ち、状況としてはかなり良いはずだ。あの状況で採れたのだから今日は捕れないはずが無い、居るのはもうわかった。しかもN氏によるとあの木にはかなりの確立でオスが居るはずだと・・・「今日こそ自分で見つけてやろう」と意気揚々と向かったのだった。この季節、行楽シーズンという事もあり、この爽やかな陽気も後押ししたのか道中車結構が多い、野山は新緑の緑で彩られておりじつに美しい。人出が多いのも無理からぬ状況だろう、出発したのも遅かったため、現地に到着した時はすでに午後4時をまわっていた。 | ||
やや着いたのが遅いような気もしたが、しかし気持ち的には余裕があった、居る場所はもうわかっているのだ、何も焦る事など無い。雑木林の入口手前付近にちょっとした遊べるグランドが有り、そこでN氏の奥さんと娘さんを遊ばせておき、私たちは自身に満ちた足取りで真っ先に前回の採集木へと向かった。それにしてもこの時期、草木の成長はじつに著しいものだ。前回訪れた時とはまるで様相が変わってしまっている、木々の葉は覆い茂り、ブッシュもかなり伸びている。あれ程見渡せた台場クヌギも雑木林の中に埋もれているといった感じだ。タラの芽もすっかり大きくなってしまい、もう食欲に訴えるものではない、雑木林自体も覆い茂った葉が太陽光線を遮断し、おかげで薄暗くうっそうとした雰囲気になっている。夏期にキャンプで訪れてカブト採集に来ていた時のそれに近い感じだ。案の定N氏も方向を間違えそうになっていた。目的の木に近づいたので慎重な足取りで静かに忍び寄る、あらためて見ても立派な見事な木だ。そっと注意しながらメスが居たウロ、そして周りの各ウロを探す・・・中央の大きな樹洞や小さな隙間なども念入りに隈無くチェックした。だがあの黒光りする重厚な姿を発見する事はできなかった。と、20cmはあろうかという大きなムカデが樹洞から出てきて、上部にある奥が深そうなウロに入っていった。するとN氏は「この奥に居るかも知れない・・・」と言いだしだ、スルスルと樹洞に入ったムカデの動きがピタリと止まったというのだ。その動作に違和感を感じた彼は、奥に大きなオオクワガタのオスが居て、躊躇したムカデがそれ以上奥に行けなかったのでは無いかという推測を立てたのだ。何とも鋭い観察力と大胆な推理、彼の採集実績はそのアクティブな行動力とバイタリティ、精神力に加えて、人並み外れた鋭い観察力と豊かな発想力によるものだと私はつくづく思ったのだ。 | ||
とりあえずその木を離れ周りの木々を見て回り、先日は行かなかったがさらに奥の方にも足を踏み入れ、居そうな木を探し、それらのウロなどをチェックした。アリ達の数はとても多くなっている、出始めた樹液にヨツボシケシキスイやアブの仲間が集まっていたり、ふと足元を見るとフンコロガシが群れいる、ウロの中に巨大なヤマナメクジがいたりと雑木林は夏に向けて活気を取り戻し始めている。今がオオクワガタにとって最も活動し易い時期だろう、しかし残念ながらその姿を見つけることは出来なかった。どうしようかとN氏と話し合う、一旦この場を離れ他の場所を探してみて、夕まずめにもう一度戻って来てみようと話がまとまり、先日最初に探した雑木林へと向かった。 | ||
とりあえずその木を離れ周りの木々を見て回り、先日は行かなかったがさらに奥の方にも足を踏み入れ、居そうな木を探し、それらのウロなどをチェックした。アリ達の数はとても多くなっている、出始めた樹液にヨツボシケシキスイやアブの仲間が集まっていたり、ふと足元を見るとフンコロガシが群れいる、ウロの中に巨大なヤマナメクジがいたりと雑木林は夏に向けて活気を取り戻し始めている。今がオオクワガタにとって最も活動し易い時期だろう、しかし残念ながらその姿を見つけることは出来なかった。どうしようかとN氏と話し合う、一旦この場を離れ他の場所を探してみて、夕まずめにもう一度戻って来てみようと話がまとまり、先日最初に探した雑木林へと向かった。 | ||
やはりそんなに簡単に捕れるはずが無い・・・前回初めて同行したオオクワ採集、N氏にとっては初めての場所でしかもあの早い時期に、捕れることを目の当たりにしてしまった私は甘い考えでいっぱいだった。あれはN氏の情熱がもたらした奇跡だったのだ。それを2匹目のドジョウを狙おうなんて、オオクワ採集を舐めているにも程がある、そう思うとまたN氏に対して申し訳ない気持ちで一杯なってきたのである。 | ||
目的の雑木林に到着、N氏の家族を「すぐ帰ってくるから(?)」と車内に待たせ、私たちは懸命に捜索した。だが、結果は得られなかった。林は生命感溢れるものに変わってきてはいるものの、オオクワガタの姿はおろか、それらしいピンと来るような生息木すらなかなか発見できなかった。20日間ですっかり変わってしまった風景の中、先日、自分なりに良さそうと思えた木をなんとか探し出したが、そこにはそれらしい気配を感じる事が出来なかった。ふと気がつくとすでに夕闇が迫ろうとしていた。すぐ戻ると言っておいたN氏の家族を1時間近くも待たせてしまっていた、昼間の余裕は焦りに変わって私に襲い掛かってきた。もはやあの場所に戻るしか無い!急いで車を走らせそこへ戻る、ラストチャンスだ・・・私たちは意を決して暗くなりかけた雑木林へと分け入って行ったのだった。山間の日暮れは街中のそれよりもかなり早い、急ぎ足でその木へと向かう、だが、やがて数十mの距離まで迫ったところでN氏は立ち止まった。余計な音が出ないよう身の回りをチェックし、熊除けの鈴もバッグにしまい込み、赤色ライトを手にもう一度気合いを入れ直し静かに静かに近づいて行った。私はしばらくその場に留まり、息を潜めてN氏の様子をうかがっていたが、N氏の「来て」というジェスチャーを見て行こうとしたその時、携帯電話に着信が・・・大事なクライアントからだ、バイブにしてあるため音は鳴らなかったが、声は出せないのでその場から数十m離れて電話に出た。手短かに要件を済ませ電話を切った瞬間「おった!」というN氏の声が、「おった〜?」私は叫びながら彼の所へと急いだ「えっ、ホントに?居たのか?オオクワか?」僅かな時間に、様々な思いが頭の中をグルグルと駆け巡った。 | ||
彼は指で半分ウロに入りかけたそれの背中をしっかりと抑えていた。「悪いけど、かき出し棒を一本取って」私はそれを彼に手渡した。彼はそれを使っておもむろにウロからそれを引きずり出し、そしてライトを照らした。黒い勇姿が浮かび上がった。オスのオオクワガタである。「おー、やった〜」「おめでとー」私はふたたび彼と固い握手を交わした。やはり居た、彼の狙いは当たっていた。素晴らしい、凄い。こんな事が・・・あるのだ。写真を撮るがもはや暗過ぎて上手く写らない。計ってみると52mm 程だが内歯の形状が中歯から大歯に近い感じで珍しい個体である。N氏はさらに回りのウロや樹洞などを細かくチェックしたが、他には発見する事はできなかった。だが、昼間のムカデがまだウロの中に居るという、ひょっとするとその奥にもっと大きな個体がまだ居るかも知れないと彼は言ったが、私はこれ以上を望む気はもう無かった。もう充分だ。そこに居るのならば居れば良い、またいつか会いに来れば良いのだ。私たちは静かにその場を後にしたのだった。 | ||
車の所へ戻るとN氏の奥さんは娘さんの相手をしながら外で待っていた。「捕れたよ!」とN氏が言うと「本当!良かったじゃん、来た甲斐があったね!」と本当に嬉しそうに喜んでくれた。片道2時間以上のドライブと殆ど待たされただけのような、決して家族サービスとは言い難い一日だが、笑顔で付き合ってくれる理解ある奥さんに支えられて、N氏の採集実績が成り立っているのだとつくづく感じた。 | ||
昆虫もそうだと思うが、種が生存していくには最低でも10ペア、20頭位はいなくては存続できないと聞いた事がある。だからこの近辺にもきっともっと多くのオオクワガタが居るのだろうと思う。だがこれ程まで発見が困難なのは、それだけ彼等が賢く、用心深く、機敏だという事だ。そんな彼等を全知全能を使って生態を理解し、生息箇所を捜索し、行動パターンを推理し、あくまで彼等と対等な立場で知恵比べをする。オオクワ樹液採集は非常に高いゲーム性を有した、素晴らしいアウトドアスポーツと言えるのではないだろうか。 | ||
完 |